女性はお腹に中に命が誕生すれば母親としての愛情が生まれますが、男性は赤ちゃんが生まれて父親として子供とじかに触れ合えば互いにオキシトシンが作られ、つながりを深められるということが分かりました。
逆に親に虐待を受けた子供は一般に、オキシトシンを作る量が少ないことが知られています。
これに似ているのがペットとの触れ合いです。
ペットの種類や面倒をどの程度まで見るかによって違いはありますが、生き物と接する触覚はオキシトシンを作り出す刺激になっています。
バラや柑橘系の香りを嗅いだ時に安心感が生まれるのも、オキシトシンが作られるという研究や、湯船につかった時に出るという報告もあります。
因果関係や作用の仕組みなどに検証すべき点が多く、科学的に広く認められていませんが、何かつながりがありそうだと研究されています。
一方、医学研究として、オキシトシンを自閉症治療に生かす試みが出てきています。
東京大学や金沢大学などのグループが、点鼻スプレーによる投与で、人とうまく意思疎通ができなかった人たちの症状を改善できないか研究されています。
発作的に大暴れする男子生徒は投与後、自制できるようになり、かんしゃくを起こしやすかった女子生徒の場合、情緒が安定し自傷行為が減りました。
こうした事例を見てきた金沢大の東田陽博特任教授は「オキシトシンはさび付いた歯車を回るようにする潤滑油のようだ」と例えています。
継続的な調査によって、長期利用の安全性や適切な投与量などの課題にもメドはつきそうで、近い将来、実用化できる見通しが開けています。
さらに研究が続き、認知症などの不安感を和らげる治療に利用されればいいなと思っています。